つれづれ電影館『あ』行


....... 2002年10月記す .......

 
『アバウト・ア・ボーイ』
描き方によっては、大変深刻に暗い作品になりそうな所をうまくかわして、軽く楽しめるハートウォーミングなコメディー風映画になっています。
作品が軽い訳ではなく、テーマは重い。大きな事件や筋があるわけでもなく、難しい事を簡単な言葉で言う、大人な味わいのこういう作り方は大変憧れます。ラスト近くの盛り上がりシーンも、他の作品なら大クライマックスになるはずが、これまたヘロリ〜と軽くかわしてしまうのです。逆にそのかわし方が余計胸に来て、思わずホロリと泣かされたのですが。この寸止め感とずれ感はとても好みです。大きく盛り上がらない分、作品に置いていかれる事なく、ずっと主人公に感情移入しているんですね。心を開いた主人公の周りになんとなく人が集まり始める「なんとなく」感なエンディングも後味よいです。

…と、書いてみると大変いい映画のようで、実際そうだとは思うんですが、ホロリときつつも反面冷めた目でどうしても気になったのが、学園祭のクライマックス。映画としてはあれでいいと思うし、ダメ人間であった主人公が少年のために、一歩前進したがんばりも分かるんですが。
実際問題リアルな状況として、主人公が「救い」にいく以前に、何かクリエイティブな事が出来なかったのか!?と少年のカラ回りしているチャレンジが心配になりました。まがりなりにも人前で芸を披露すると決めた以上、日数もあったのだから、練習はしたのか?少しでも良いものになるよう努力したのか?という…。舞台に上がるという行為自体が少年の一生一代の最大の勇気だったことは分かるんですが…。「僕はどうなってもいい」「お母さんに歌を聞かせたかっただけ」で、ただ突っ立って歌われたのでは、聞いている方も迷惑。それは、古い歌だとかヘタクソだからという問題ではなく、それ以前の心構えだと思うのです。あれは痛々しいというより、イタい場面だったなあ…。人間一人では生きられない、誰かを救うことで自分も救われるのだというテーマに甘えて、一人でもがんばって何かを成す事による成長(それによって周囲から認められる自分の位置(地位とは違いますよ))、という視点が、どの登場人物にも欠如している感があるのですね。それが出来ない弱者の集まりだからこそ成り立つ映画ではあるのですが。何も出来なくても皆相手を思って、誰かを支えることで自分も支えられて…その図は大変あったかいのですが。ともすれば傷の嘗めあいで、優しい自分を認めてくれる優しい人達というコミュニティーの中で満足してしまう危険をはらんだ作品でもあると思います。シビアなテーマを含んだいい作品だからこそ、それでいいのか!?と突っ込みたくなったのでした。軽くコメディ風にもっていくのと、あまっちょろいのとは違うと思うので。ここが出発点で、ここからはじまる話であると思いたい。

ヒュー・ブラントは本当にこれが地に見えるほど、優柔不断なダメな役が似合います。(『フォー・ウエディング』しかり)こんな味のあるいい役者になっていくとは、『モーリス』の頃は思いませんでしたよ。てっきりトム(クルー●)系にいくかと…(笑)。それと、アヒル&投パン事件の逆さアヒル大好きです。あれの為にもう一度みたいと思う(笑)。

監督:ポール・ウェイツ/クリス・ウェイツ。出演:ヒュー・グラント、トニ・コレット。2002年アメリカ作品。



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