『ユージュアル・サスペクツ』の監督の2作目はスティーブンキング原作。後味の悪さに沈黙。独特のつきはなしたようなクールな視線と追い詰められていく雰囲気はさすがという感じなのですが、なんといってもナチス絶対悪的ネタなのであります。ちょっとかなりヤバ目?世間から隠れるように、ひっそりと余生を送っていたナチの将校の生き残りと、少年との交流の物語です。いや交流というと暖かなイメージがありますが、そうでなく。
ほんとにキングは守備範囲が広いですね…。ちょっと頭をかすめてはすぐ忘れてしまうような、人の心のいろんな感情を、スポイドで抽出してそれぞれ1本の作品にしてしまうタイプなんだなあと思います。これもそのスポイドの悪意の部分です。 ナチの生き残りの老人を見つけた少年が、好奇心だけで近づいて聞き出そうとするのです。 「ねえ、人が死んでいく時ってどんなの?」「人を殺す時ってどんな気分?」 ただの優等生の少年の好奇心が、どんどんと人の深くにある悪意を引きだし、やがて自分自身も抜け出せないドロ沼へとはまっていくのです。最初は、もうよしてくれ…と罪におびえるように見えた気弱な老人が、心の奥底のパンドラの箱をこじ開けられ、次第に立場が逆転、少年を精神的に支配しはじめます。ナチスの形を取って語られる殺しへの興味は、純粋な、自分を抑圧する他者に対する殺意として少年の心に根付いていきます。このエンディングは、あえて部類分けするならホラーでしょうか?映画が終わった後も続く、悪意の伝染。 ここでは登場人物達の人間性や過去は、深く語られる事はありません。それだけに、底に眠る悪意が、まるで人間の本来の欲求であるかのように語られる恐ろしさ。
ブラッド・レンフロはずいぶんいい感じの役者(しかも汚れ役が似合う)になっていっていると思うのですが。少なくとも一時言われたようなアイドル俳優とは違う方向に脱皮していきそうで、今後が楽しみです。
監督:ブライアン・シンガー。出演:ブラッド・レンフロ/イアン・マッケラン/1998年アメリカ作品。
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