電影館『あ』行


....... 2001年01月13日 (Sat) .......

 
『オーロラの彼方へ』
まず、この映画地味だけどかなりの傑作!しかし邦題がいただけない!このタイトル(とポスター)、極限の自然の中で生きる親子の感動ものなどと普通思ってしまうのでは。私も最初はタイトルの連想からこの作品ノーマークでした。正月映画の情報を求めてうろうろしていて、意外なネタに驚いたクチ。映画を見終わって、帰りのエレベーターの中で聞いた老夫婦の会話が『もっと優しく感動的な大自然の物語かと思ったのに…こんな恐ろしい死体やら銃やら見せられて……ねえ、おとうさん』『……うむ…』。そう、タイトルからは想像もつかない、これはタイムパラドックスを扱ったSF要素と連続殺人事件を絡めたSFサスペンス&ヒューマンファンタジーなのです。(と、カタカナを羅列するとなんか凄いな…)原題の『フリクエンシー(周波数)』でもよかったのでは…。

「もし父が生きていてくれたら…」30年前に仕事中の事故で死んでしまった消防士の父フランクを、事ある毎に思い出す主人公ジョン。6歳で止まったままの父との思い出。大の野球ファンでいつもキャッチボールに付き合ってくれた、自転車の乗り方も教えてくれている途中だった…両親が明るく笑いあう暖かく輝かしい家庭の思い出を、36歳になった今もどこかでひきずっていた彼に、突然の奇蹟が訪れる。
1999年のニューヨーク。空にオーロラが見えた夜、磁場の影響か否か、30年前とアマチュア無線が繋がってしまうのだ。しかも無線の声の相手は、30年前のその2日後に死んでしまうはずの父親。1999年の息子と1969年の父親との、声だけのタイムトラベル。そして未来を知らせることにより、父親は死を免れる。そのことによって起こるタイムパラドックスが、連続殺人事件を引き起こし、その犠牲者には母の名が…。

過去を変える事によって起こる、未来の変化とタイムパラドックスというと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ターミネーター』(ひいては『ドラエもん』(笑))を思い出させますが、そのことによって起こる記憶の変化やとまどい、時を埋めようと語り合う親子の交流の姿が、実に丁寧に描かれていることによって、単にSFネタとはいいがたい暖かい人間的な感動を覚えます。しかもタイムトラベルといいながら、時を越えているのは声だけ。「この奥ゆかしさ、寸止め感」というパンフの表現にこくこくとうなずき。父が助かった事によって流れ込む、父との新たな記憶に恍惚と、また呆然としているジョンの幸福感は、見ているこたら側にも肌感覚的に伝わってきます。父と一緒に車を洗っている記憶、自分が草野球の選手になったことを大喜びしている父…30年後の机に飾られた写真に、姿をあらわす父の姿。言う機会のなかった言葉「愛してるよ」と会話を交しあえる素晴しさ。けど喜びだけではありませんでした。3件の過去の殺人で終わっていた事件が、10件を越え今も未解決の連続殺人へと未来が変化していく中、2人は声と信頼だけを頼りに、危険に立ち向かうことになるのです。
タイムパラドックス物は沢山あれど、この本来なら破綻しそうな前半と後半の異なったテイストを見事に1つの作品として完結させているさまは、過去覚えがないほどに秀逸。前半のヒューマンドラマとしての暖かい親子の交流の描き方も、後半の連続殺人犯を追うサスペンスとしての展開も、どちらも添え物でなく一級であることにうならされます。時間と未来がカチカチっと繋がっていく時間物としてのカタルシスもしっかりと有り。

パラドックスや、そのことによって起こっているであろう他の犠牲やラストなど、気になる点もなくはないのですが、それ以上に物語としての完成度の高いアイディアやエンターテイメント性など、出色の1本。素直に感動させてもらいました。(そしてもとより時間ネタ好きの私にとってはたまらない1本!ある意味漫画的なアイディアかも。)

監督:グレゴリー・ホブリット。出演:デニス・クエイド/ジム・カヴィーゼル/エリザベス・ミッチェル/2000年アメリカ作品。



No.(23)

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