『シックス・センス』のナイト・シャマラン監督の新作。いや…これはどうなんだ?飽きもせず面白く最後まで見ることが出来るので、映画としてはオッケイなんでしょうが、かなり思想的にアブナイ映画。そして、アメリカと日本の漫画(コミック)文化の違いを、さまざまと見せつけられた気がしました。でもって、漫画文化の片隅にでも位置している人間(いや、書き手だろうが読み手だろうが)には、ある意味面白おかしくてしょうがないテーマというか内容です、いやもう。(イベント会場で上映希望〜(笑)と、いろんな意味で思いましたよ…。いそうで…こういうアブナイ人…(笑))…この監督は、本当に前作といい本作といい、同人オチというかマンガ落ちなどんでんがえしをしますなあ。
大規模な列車事故で唯一無傷で生き残った人物が、その事故をきっかけに自分に疑問を持ちはじめる。『そういえば、前に病気になったのはいつだろうか。ケガをしたのはいつだろうか?』…宣伝では、この冒頭をキャッチコピーに使い、ちょっとオカルティックでサスペンス風なイメージで売り出していますが、これにはかなりヤラレタ!という感じです。本当なら壮大な(?)コメディかオタクサイコ物になりそうなネタを、いかにも難しく自分探しチックにシリアスに撮った、と感じてしまう居心地の悪さはどうしたもんか。静かに真面目に拝聴すべきなのか、これは笑わそうとしているのか、判別のつかない展開やシーンが多々ありました。主人公とその息子との交流も、実に感情の流れが分かりにくい。『私はどこか重要なシーン、意識が跡絶えて見逃したのか??』と思わず思ってしまいました。
冒頭の事故から始まる、ブルース・ウィリス演じるデヴィッドは、アンブレイカブル(壊れない)体の持ち主だったのです。そう、彼は弱い人々を助けるスーパーマン!死なないヒーローだったのです!…しかし、彼はそれに気付いていない。あくまで普通に平和に暮らす小市民でいようとするあまりに、自分の能力にも気付かない(というか開花していないというか)。だが、彼にそれを指摘する人物が現われます。朝、なんだか悲しくて不安な気持ちで目が覚めるんだ、と話すデヴィッドに『それは君が本来なすべきことをしていないからだ』とコミックを引き合いに出して、諭します。イライジャと名乗る彼は、両手両足を骨折した状態で生まれ、その後も54回も骨折しミスター・ガラスとあだ名される、主人公とは対局をなす脆い体の持ち主だったのでした。小さなエピソードが積み重なり、ギャグかサイコかと思われたコミックマスター…もといコミックコレクター・イライジャの言う通り、デヴィッドはヒーローとして覚醒していきます。謎の救世主として、コミックの世界と同化していくのです。う〜ん。
陰と陽、善と悪の比喩的物語であり、最後の最後で、2人は『X-メン』の教授とマグニートの様な関係となって終結します。対局であり、向かい合った存在であり、というイメージを漂わせるために、逆さのアングルや鏡が印象的に使われています。そのあたりのアレゴリーのある絵作りは、この監督の特徴ですね。基本的には、こういうこだわりのある撮り方、私は好きです。しかし、行き過ぎというか、主人公のインナースペース的小さな世界を表わしているのだろうと思われる、暗くてアップ&トリミングを多様した画面は、ちょっと分かりにくい。ロング(背景や風景)のあるカットがあまりに少なく、場所移動や、今何が起こっているかが、つかみにくいのです。全体的な世界がわからず(これも、そう意図した物かもしれないとは思うのですが)スムーズに話についていけず、戸惑いや想像(こ…ここはたぶんあそこだよな!と推定しながら画面を見る)が多かったです。
いや、でも、面白かったですよ、ほんと。この監督の独特の視線のズレが大変興味深いので、新作が来たらまたきっと見にいくでしょう。
監督:ナイト・シャマラン。出演:ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/2000年アメリカ作品。
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