つれづれ電影館『あ』行


....... 2003年11月記す .......

 
『“アイデンティティー”』
(※ネタバレなし…のつもりですが、これからすぐ見る予定があるなら読まない方がよいと思います。)


<嵐の中、一軒のモーテルに故意か偶然か集まった客達。やがて殺人事件が起こり、一人づつ消えていく…>
<ラストは反則スレスレ>
という情報のみで見たのですが、これは私も読めなかった。
やられた〜というか、こんなホラーな作品だとは思いませんでした。いわばサイコサスペンスの変化球です。
普通にありがち殺人事件サスペンスだと思っていたので、驚愕のラストというより「…………え?マジ?」という感じ。
反則スレスレ落ちも、ホラーだと思えば、大変普通の常套手段です。
いや、実際に真のホラーという訳ではなく、見方によっては悲しい話なんですが。
でも、そのネタとなっている精神病理的な痛ましさを語るよりは、観客をひっかけるトリック映画として作られているんですね。

『サイコ』や『そして誰もいなくなった』など、このタイプのサスペンスやホラーを見慣れていて、『あ、これはこう来るな』とか『読めたぞ〜ふふふ』『ん?キングネタか?』と思ってしまいそうな人こそを、ひっかけるというか煙にまき、ミスリードする作りになっているのです。
その為の仕掛けが、いろいろと張り巡らせてあります。
(ホラーやサスペンスの映画が好きな人ほど、ひっかかるヒント数が多いと思われます。看板の文字とか、数字とか…。<裏庭の向こうにあるインディアンの墓>というセリフにニヤッとする人程要注意。)
話は全然違いますがが、作りとしては『ユージュアルサスペクツ』や『シックスセンス』に似た趣きかも。
でもひっくり返し方が、いきなりのビックリではなくちゃんと行きつく先を計算してそこに運んでいるので、素直に「やられた〜」という気分になりました。

キャラクター造詣も、なかなか見事。
ちゃんとキャラの書き分けがはっきりしているので、典型的な話に見えても興味を持って続きを見てしまう。
導入部分や最初しばらくの展開は、観客がなめてかかりそうなほどステレオタイプで分かりやすく、類型的に作られているんですが、それも敵(制作側)の企みなのです。
上手いなあと思ったのは、その企みを、クライマックス半ばでサクッとばらしてしまう事。
これがあるおかげで、私はこの映画のラストは反則だとは思わずに済みました。
ルールを説明した後に、再スタートするという親切設計。そしてラストともう一段のオチ。
(このラストは読めなくもないんですが、もうそんな事はどうでもいいという感じです。ここまでくれば、みんな最後まで見るでしょうから。)
とにかくテンポがよく、ほとんど<モーテル>という一つの舞台と限られた登場人物で話が進むにも限らず、飽きさせずサクサクと見せてくれます。

演出として、引っぱって引っぱってドギャン!という脅かしも結構あるので、そういうものが苦手な人は要注意。
『フレvsジェイ』などより、よーっぽどホラー仕立てで怖いです。(あれは笑って見ていられる。)
レイ・リオッタはまた怪しさ満点の役でした。ジョン・キューザックは時々ケビン・スペイシー似。

終わってみれば、タイトルも予告も、ものすごく堂々とネタバレしている事に気付きました。
ネタを知った後、もう一回最初から見たくなる映画です。私は結構気に入ってます。


監督:ジェームズ・マンゴールド/出演:ジョン・キューザック/レイ・リオッタ/アマンダ・ピート/2003年米作品



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