ちょいとオタクらしく語りますよー。※)ラストまでネタバレあります注意。
大ヒット美少女ゲームの劇場版アニメです。
テレビで放映していた同作品をずっと見ていましたが、これがテレビアニメとしては神レベルというか、演出、作画等かなりのクオリティで、うかつにも泣かされたりしておりました。
だもんで劇場版にも足を伸ばしてみたわけです。
ところが…なんてこったい。
じっくり時間をかけて描けるテレビとは、演出もストーリーも違って当然。単体としてこの作品のエッセンスを劇場版の完成度で見せてくれるのを期待していたのですが…だめだ。テレビの足元にも及ばない作画、そしてこの作品とは全然あっていない演出。
前知識として。この映画の監督が生み出した、出崎ハーモニーと呼ばれる演出をご存知でしょうか?
一時期のアニメで大流行した、止め絵や荒い描き絵をぶらす独特の演出方法です。
代表作は『あしたのジョー』『エースを狙え』『ベルサイユのバラ』。
という前置きの元、劇場版では何度も噴出しそうになりました。泣かせどころかそれはもうしつこい出崎ハーモニー演出。あの雰囲気の重要な『AIR』で、「みすずー!」と叫んでいきなりハーモニー!5分に1度といいたくなるほどの頻度でハーモニー。
例えば、俺は出て行くぜ、と言った往人さんのセリフに、<真っ白になったジョー>や、<オスカールと叫ぶアンドレのアップ>みたいなあの演出で悲しむ観鈴ちんを想像して頂ければ違和感は判ってもらえますか?
ゲームもテレビアニメも知らない未見の方の感想は判らないのですが、少なくともこの作品を知っていて期待して見に行った人の多くは、微妙な感想を持つんじゃないかと思われました。
なんていうか、女性の私からはキャラクターに萌え〜という要素は少ないです。というか落としゲーとしての萌えはゲームプレイ時からありませんでした。
でもこの作品が気になっている要素のひとつに、空気感の描き方の上手さがあります。
いわゆる、ありえないノスタルジックというか、『僕の夏休み』チックな、それだけで泣きたくなるような夢のような空気感や情景。空とか海とか、夏の真昼の人気の少ない町に響く蝉の声とか。
それはゲームもテレビアニメも、作ってる側が絶対判って狙っていて、ファンタジーなまでに強調されています。その中で電波とファンタジー紙一重な物語が展開されていくわけですが。すべてが夏の夜の夢のような世界に溶け込んでいるので、星を見ながら語る少女も幽霊の少女も電波な主人公も、それはそれとして、魅力となる要素だけを強調して感情移入したり可愛く思えたりとかするわけです。
無言でロングで、ただ空を広く映す事で悲しさを表現するような、そういう行間の上手さみたいもなのが、他のギャルゲーから一歩抜きん出たこの作品の良さだろう?と私は思っているんですが。
(ゲームはまあノベルズなのでアレですが、テレビアニメはそれが絶妙に上手い。その為の情景描写、空の色なんかに対する心配り具合は相当なもの。)
そして根本的に、劇場版としてのクオリティを疑います。
場面転換を、ハーモニーや真っ暗に暗転した中の音やセリフだけの演出で運んでいる所が多く、紙芝居のような印象を受けます。上映が終わったとき、劇場のあちこちから聞こえた声。「動かねー」「今日び深夜アニメでももうちょっと動くよなあ」まさに、そんな感じ。
そしてストーリー。
劇場版として短い時間に詰め込むのですから、ゲームの膨大なシナリオが入らないのは判っていますが、それにしても他にやり方はなかったものか。
過去(SUMMER)編と現在(AIR)編を、観鈴の語りに乗せて、重ねて進行させているせいで、単に過去のお姫様の悲劇話をなぞって病弱で死んでしまう女の子が最後の夏に頑張って告白したゾ!ブイ!という印象のストーリーになってしまっています…。
最近流行の純愛モノみたいな印象ですね。病弱な女の子の、ひと夏の最初で最後の恋の物語。ならば、そこを徹底するべきだったと思うのですよ。
往人さんも消えてません。彼の力や過去の因果関係なし。旅の途中で可哀想な女の子に出会って、忘れがたい夏の思い出になりました。完。という物語。
往人さんの力や彼のお母さんから伝え聞く伝説の話なども随所随所に出てはくるんですが、結局物語を何も引っ張っていませんし、話もオチていません。伏線として生きていない。むしろ余計なエピソードにすら思えます。
観鈴のおばさん…もとい母、春子さんはまだ頑張って描写されていたように思いますが、それでも後半(ゲームやテレビでは往人さん消えて以降)のふんばり巻き返しの感動場面がなく、一気にラストシーンへ。ちなみにそこの号泣シーンも例のハーモニー演出。
そのくせ、観鈴が不登校児設定でクラスメートから影口を言われていたり、川がコンクリ固めのちょっと汚い川だったり、変な所がリアルで生々しくて、気になります。
興味がある方には観て損とまでは言いませんが、どちらかというなら絶対テレビ版をご覧あれと勧めます。特にゲームを知っている人なら。
まあ電波な美少女達がそぞろ出てくるアニメという時点で引く方にはそもそも勧めませんが…相当電波度は高いですし。でも、今近流行のギャグとか勢い押しでなく、真面目に情景で感情描写をするアニメとして、テレビ版は私の中ではかなり印象好感度です。劇場版と比べてみるのも一興かも。
監督:出崎統 出演:川上とも子/久川綾/緑川光 2004年日本作品
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