ポスターやビジュアルの雰囲気に惹かれて、内容もよく分からないまま見に行った映画ですが、とてもしみじみと心に染み入る作品でした。
長男を亡くし、皆心に傷を持ったある家族が、心機一転をはかるためアイルランドからニューヨークに移住してきます。貧しい人達の住むボロアパートも、文化的なギャップも、幼い少女姉妹には魔法のような不思議な世界。立ち直れずにもがく夫婦と、きらきらした純真な魅力を振りまく姉妹、そして謎めいたアパートの住人などを巻き込んで、ゆっくりと季節は移り変わるのです。
簡単に言ってしまえば、再生と癒しの物語。最初は単に「ああ泣かせる家族ものだな」という感触だったのですが、かなり早い段階で、心に傷持つ父親の痛い(というよりイタイ)壊れっぷりが出てきたせいで、腰を据えて挑む気持ちになりました。
単に苦悩している姿を描くのではなく、明るく笑いながら普通の生活を送ろうとしているのに、ふとした折にそのひずみが現れる。たとえば夜店のゲームでひとつの景品を取る為に、ムキになって一ヶ月の生活費を全部つぎ込んでしまうような。しかもギャンブル好きという訳ではなく、側で父親を信じて応援している「娘の為に!」だと本人は思っている。しかも娘も分かってる。「パパもうやめて」と必死に祈っているけれど、父の思いを否定するようで、それを伝えられない。…そういう、何かを振り払う為に何かにのめりこんでタガが外れてしまうような演出が憎く、本当にイタくも辛いシーンが続きます。
家族関係は執拗なまでにシビアに描写しているのですが、この作品で今年のアカデミー賞助演男優の候補にもなっている、黒人のジャイモン・スンフーの扱いが、とても微妙。もちろんなくてはならない役なんですが、ちょっと一度見ただけでは掴みきれない不思議な役どころでした。エイズで苦しみながら生きることを愛している孤独な画家の役なのですが、彼の周りにある謎のお金の話といい、ちょっと天使っぽい描き方で、私としては若干首をかしげる部分もありました。もしかして私が見落としているさりげない伏線などがあったのかもしれませんが。
全体としてシビアでリアルでありながら、多少ファンタジックな描き方をしているんですね。そのちぐはぐなバランスが、時々はっと物語から私を我に還らせるのです。ああ、これは映画で、作り物で、物語なんだなと。
そこが気になるか否かは個人差でしょうし、シビアな世界だからこそ、その描き方が息抜きになると思う方もいるでしょう。個人的好みとしては微妙な所なのですが、優しくて静かな小さな良作なのは間違いありません。
純真に無垢に見えた少女達の、タイトルにも繋がる「最後のお願い」には思わず泣かされました。
子供もちゃんと見ているのです。大人達を。そして世間を。明るく振舞う事が家族を助けるんだという自覚を持って行動していた長女がとてもいじらしく切ないです。そして子供をどこか見くびりつつも甘えている大人の駄目さにまた胸が痛むのです。
真面目な話なのにこういう事を言うのはなんなのですが、とにかく少女達が可愛いのですよ!妹役のエマ・ボルジャーの可愛さは犯罪級です。『秘密の花園』『フェアリーテイル』などのような幼女好きには必見。天使の姿で街を走り回っているシーンなどは、そういう映画じゃないとは判っていても、イタズラや拉致監禁されないか本気ではらはらしてしまいました。あれはあまりに危険です。ご両親、息子を亡くしてさぞお辛いとは思うのですが、今生きている娘達をしっかり守ってくださいね。マジでヤバイから。…ほら、娘達も祈っているでしょう?家族が過去から解放される事を。
監督:ジム・シェリダン 出演:サマンサ・モートン/パディ・コンシダイン/ジャイモン・フンスー 2003年米国作品
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