『ミッシング・ガン』原題は『尋槍!』=わあ、拳銃がない!
中国産では珍しい現代劇サスペンス。
一人の警官が紛失してしまった、<消えた>拳銃をめぐる人間ドラマでもあります。
村中を駆け回って拳銃を探す中で、その行為は次第に主人公の自分探しにも重なっていくのです…。
〜〜なーんて書くと、堅苦しい文芸物のようですが、全然そんな事はないのですよ。そこがこの映画の不思議な所。この妙な面白さとテンポは、中国の未来のジョニトウ(※)と呼んで期待しちゃうよ陸川監督!
パンフやレビューなんかで<中国のウォン・カーワイ>と呼ばれている事を後で知りましたが、そうか!?確かにスピーディなカット割などに影響はあるかも知れないけど、あくまで繊細な映像世界を作るカーワイとは違うだろ?という気が。スピーディさがオシャレではなく泥臭くも躍動感溢れる生命力になっている感じがするのですよ。
(※=香港の杜峰監督。代表作は『ザ・ミッション/非情の掟』『暗戰/デッドエンド』など。ハリウッドに行ってしまったジョン・ウーなき後、香港の男魂を担う第一人者でもあり、頼まれ仕事のあらゆるジャンルを手堅く作り上げるヒットメーカー。)
事件らしい事件もなさげな、のどかな村でのほほ〜んと暮らしていた人のよさそうなおまわりさん。朝起きたら拳銃を紛失している事に気がつきます。うわ!大慌て!という所から話は始まります。
やがてその事実が内外にばれ、彼にとっての警官としてのアイデンティティや、家族関係、ほとんどが知り合いの村の信頼関係をも揺るがす事態へと発展。そしてついに彼の銃によって第一の殺人が起こり…。
普通なら文芸物の舞台になりそうな、中国の山村の小さな村で起きた、大変地味で小さい事件なのですが、編集とカットと音楽でここまで楽しい作品になるのだなあ〜とうならされました。正直こんな変な中国映画は初めて見たような気がします。
テーマは真面目で、劇中の人々もいたって真剣なんですが、なんかこう、天然なおかしさが。
「なくなった拳銃がアメリカに渡ったのならいいが、北京だったら大変だ!」
…いいのか!?アメリカならいいのか!?
主人公の警官が、署長に怒られるシーンでも、
「拳銃には弾が3発入っていた。犯人がお前の銃を使えば、3人の命が失われるかもしれん!」
「プロは1発で2人を殺せるという。そうなったら6人が死ぬかもしれんのだ!」
「1発で3人なら、9人の命がー!!」
いや、落ち着け署長!落ち着け村の衆!
コントでもギャグでもありません。登場人物はいたって本気な、大真面目なサスペンス映画です。
中国の官僚社会と田舎の公務員の関係などを示す、うまいセリフではあるのですが、どうしてもくすっと笑ってしまう撮り方なのですよね。そういう味が、端々に隠れています。
いかにも若い監督だな〜という編集の飛躍や、すぱすぱ小気味よくカットしすぎて、人がワープしちゃったり、おいおいセリフのラスト切れちゃってるよ〜というような荒さも多々あるんですが、それまでもがテンポとおかしさになってしまっている貴重な映画です。中国映画の今の一端を体感する意味でもお勧め。
有名な俳優の姜文さん演じるマーさんが、中国のジャン・レノと呼びたいカッコよさ。
カッコいいんだけど、やっぱりどこか牧歌的で「マーさんがんばれ!マーさんがんばれ!」と手に汗握りながら運動会のような掛け声をかけたくなる、変な映画でした(褒めてます)。
監督:ルー・チューアン 出演:チアン・ウェン/ニン・チン 2001年中国作品
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