つれづれ電影館『さ』行


....... 2004年06月記す .......

 
『シルミド』
見終わった後の熱い血潮度で本年度前半No.1にしちゃう程のインパクトでした。

私としては、もんのすごく大変面白かったです。世間の評価はあえてまだ見てませんが、誰がなんと言おうと私は大好きです。期待はしていましたが、大きく期待以上でした。
水曜なので他の映画とハシゴするつもりだったのに、「うおぉおぉお〜」という気分が尾を引いて、これ1作だけでふわふわ帰ってきてしまいました。
韓国の南北の動乱の歴史の中で、伏せられた実話を基にした話ですが、これがとても面白い。
深刻で悲しくて真面目で大変な話だし、真摯に作られているのもひしひしと判るんですが、派手な演出が見世物でなく、ちゃんと物語を語る為のエンターテイメントになりえている所が凄いです。
よもやこの素材で、前半は劇場笑いの渦、後半嗚咽が響き渡る映画になっていようとは…。


1968年、韓国の大統領を狙った北の特殊部隊の潜入(暗殺は未遂)に激怒した韓国政府は、報復として同じ人数の特殊部隊を育て、北の金総書記の首を取るという計画を立てる。そのために集められたのは、犯罪者や死刑囚を含む社会の底辺の男達31人。
戸籍も名前も消され幽霊のような存在となった彼らに、マンツーマンで空軍の指導官が付き、無人島<シルミド>で、地獄の特殊訓練が始る。
だがバリバリの殺人マシーンに育った彼らが北へと出発したその瞬間、政府の方針変更から作戦中止が決まり、彼らは島への帰還を余儀なくされた。
国際社会での批判を恐れた韓国政府は、計画そのものの隠蔽、すなわち彼らの抹殺を島の司令官に送ったのだった。
しかし共に生活を続けてきた彼らの間には、人間的な交流(この辺が熱く濃い)も芽生えており、そんなことは出来ないと突っぱねる司令官に韓国政府が下した命令は、
「訓練兵達を一週間以内に抹殺できなければ、空軍の指導官含む、島の関係者全員を消す」 というものだった。
その事実は訓練兵の間にも漏れ、生きるか死ぬか、互いに決断の時が迫る。そして自分達を切り捨てようとした政府・ソウルへの怒涛の特攻…。


…と、書き出すとまるで漫画のプロットのようですが、たかだか30数年前に本当にあった出来事だというのだから凄いです。当時は軍事政権下だったため、最近までその事実は伏せられていたといいます。生き残りの証言などから、次第にその真実が明らかにされているとはいえ、未だに本当の名前も判らない犠牲者の方々もいるのだそうで、その事実がラストのあるシーンでの号泣を誘います。

真面目な話なので、真面目に語りたいのですが、面白いものは面白いのですよー。
この映画を見て思い出したのは、『男達の挽歌』とか『省港旗兵』『ワイルドブリッド』など、暑苦しくも熱い懐かしの香港漢映画。まさに<お前らバカか>と言いたくなるほどの熱さに思わず涙する、80年代香港ノワールの系譜です。
『挽歌』のユンファ兄貴やティロン兄貴が31人(訓練兵)、加えてレスリー演じるキッド君31人(指導官)が、スクリーンいっぱいにオロナミンCよろしく、「ふぁいとー!いっぱーつ!うお〜〜〜〜!!」と走り回っている図を想像していただければ、どれほど汗暑苦しく熱いか判って頂けるかと…。
女の姿などモブくらいしかなく、直球ストレートの男世界。たまりません。
壮大な音楽と共に、これでもかと泣かせる展開がベタに繰り広げられようとも、ジョン・ウー育ちにはそれすら快感。
この世界がお好きな方には、ぜひとも「見ておけ!劇場で公開時に見なかった事を絶対後悔するから!」と声を大にしてお勧めしたい。(誰もが面白いとは言ってないので要注意。)


監督:カン・ウソク  出演:ソル・ギョング/アン・ソンギ/ホ・ジュノ 2003年韓国作品




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